秋冬に保育所で流行る感染症の特徴と対策:「溶連菌感染症」

Mocosuku Woman から引用


空気が乾燥し、気温が低くなるこれからの季節。乳幼児は風邪だけでなく、インフルエンザやRSウイルス感染症といった、ウイルスによる感染症にも気をつけなければなりません。そのほか、のどの痛みや高熱など、かかりはじめの症状こそ風邪やインフルエンザと似ているものの、合併症につながるケースもあるため注意が必要な病気に、「溶連菌(ようれんきん)」という細菌による感染症があります。



◆溶連菌感染症とは

溶連菌は、正式には溶血性連鎖球菌という名前の細菌で、おもにのどに感染して、咽頭炎や扁桃炎といったのどの病気や、小さな赤い発疹を伴う猩紅熱(しょうこうねつ)などを引き起こします。

溶連菌感染症は、子どもの間に多く見られる感染症ですが、大人でも感染することがあるため、抵抗力の落ちている人や高齢者も注意が必要です。また、3歳未満の幼児の場合は、発症しても高熱が出ず、軽く済むことも多いといわれています。



◆おもな症状

溶連菌感染症のおもな症状は、発熱(38~39℃)、のどの腫れや痛み、全身のだるさ、嘔吐などで、風邪やインフルエンザと似ていますが、上記のように手足などにかゆみを伴う小さな赤い発疹が出たり、熱が下がった後で手足の皮膚がむけたりといった症状が出ることがあるのが特徴です。また、舌に小さな赤い未蕾(みらい=味覚細胞)がたくさん出て「イチゴ舌」と呼ばれる状態になる場合もあります。



◆感染ルートと予防法

インフルエンザなどのウイルスによる感染症と同じく、溶連菌もくしゃみ・咳などの飛沫を吸い込むことや、ウイルスのついたドアノブや手すりに触れた手を口に持っていくことによって感染します。そのため、保育所や幼稚園などでの集団感染も多く、マスクや手洗い、うがいといった予防に加えて、みんなが触るドアノブ、おもちゃなどの消毒といった対策も必要となります。

また、溶連菌感染症は、家庭内で感染が広がることも多く、特に症状の出はじめの急性期においては、兄弟間での感染率は25%という報告もあります(国立感染症研究所の資料より)。



◆アトピーの悪化と合併症

上記のように皮膚に関する症状があるため、アトピー性皮膚炎の子どもの場合は、溶連菌感染症になると、かゆみがひどくなったり、合併症として、まれに「とびひ(伝染性膿痂疹)」を発症してしまうケースもあります。

また、アトピーの有無に関わらず溶連菌感染症は、心臓に損傷を与えるおそれのある「リウマチ熱」や「急性糸球体腎炎」といった合併症につながるおそれもある病気のため、医療機関で適切な検査・治療を受けることが特に重要なのです。



◆検査・治療について

溶連菌の感染については、医療機関でのどの粘膜を綿棒でこすって細菌を採取する検査をおこないます。検査結果は10分程度で出るので、溶連菌の感染症にかかっていた場合は、その日のうちに適切な薬を処方してもらうことができます。また、治療については有効な抗生物質があり、通常は内服してから2~3日で発熱などの症状は治まるといわれています。

しかし、この病気に関しては、合併症(続発症)の発症を防ぐため、のどの痛みや発熱などの症状が治まった後も、医師の指示通り定められた期間は薬を飲み続けることが重要です。

また、溶連菌感染症は、学校保健法により、感染のおそれがないと認められるまで出席停止の対象となり得る病気です。ちなみに、厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン(2012年改訂版)」では、登園の目安は「抗菌薬(抗生物質)内服後24~48時間経過していること」とされています。

溶連菌による感染症のピークは、冬と春~夏にかけての2回です。これからの季節、保育所や幼稚園での集団感染を防ぐためにも、もし子どもが溶連菌感染症と診断された場合には、登園のタイミングについても医師の判断をあおぐことが必要です。

監修:坂本 忍(医師)