溶連菌感染症の知識・合併症


「溶連菌の潜伏期間~完治まで」

溶連菌感染症の基礎知識

ドクター監修のもと、溶連菌に感染してから症状が現れるまでの潜伏期間と、完治するまでの流れについてお伝えします。溶連菌感染症はしっかり完治を確認しなければなりません。その方法についても知っておきましょう。


溶連菌感染症は、感染してすぐに症状が現れる病気ではありません。発症するまでの菌の潜伏期間と、完治するまでの流れについて解説します。


★溶連菌の潜伏期間

溶連菌感染症は、ほとんどが「A群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)」という細菌によって発症します。感染してから体に症状が出るまでを菌の潜伏期間と言いますが、溶連菌の場合はだいたい2~5日間と考えてください。くしゃみや鼻水、唾液(だえき)などの飛沫により感染し、2~5日ほどで症状が現れることがほとんどです。


★溶連菌感染症が完治するまでの流れ

溶連菌の代表的な症状は、38~39度の高熱とのどの痛みです。診断は咽頭検査や血液検査により行われますが、溶連菌の感染がわかると、主に抗生物質が処方されます。この抗生物質をしっかり服用すれば、3~5日以内に熱が下がってくることがほとんどです。のどの痛みも落ち着いてくるでしょう。


解熱後およそ1週間経つと手足の皮膚がふやけたようになり、皮がむけることがあります。アトピー性皮膚炎がある場合は、溶連菌感染症を発症すると重症化する可能性があるため、溶連菌が流行したときには十分に注意しましょう。


溶連菌を完全に退治するには、10日~2週間ほど抗生物質を飲み続ける必要があります。この期間は処方される抗生物質によって異なるため、必ず医師の指示に従ってください。症状が治まったからと中途半端に服用を中断すると、再発や合併症の発症につながる恐れがあります。症状がなくなったとしても、処方された抗生物質は最後までしっかり服用しましょう。溶連菌感染症が完治したかどうかを判断するために、症状が改善してから2~4週間後頃に尿検査を行うこともあります。


溶連菌感染症は、きちんと治しておかないと急性糸球体腎炎※1やリウマチ熱※2といった重大な合併症を引き起こす可能性もあります。自己判断をせず、必ず医師の診察を受けて完治を確認してください。


※1(急性糸球体腎炎)~なんらかの感染症により、糸球体(腎臓を構成する球場の毛細血管のかたまり)に炎症が起こった状態。


※2(リウマチ熱)~溶連菌感染症が治った2~3週間後、急に高熱を発症する病気。強い関節炎をともなう場合もある。約半数に心炎が見られ、適切に治療が行われない場合は心臓の弁に障害が残ることも。



出典: ヘルスヘア大学



「合併症」

①.中耳炎、気管支炎、リンパ節炎。


②.急性腎炎:溶連菌感染後2~4週間後に発症することがあります。突然、むくみ、尿の出が悪くなり、尿に血や蛋白が混じってきます(血尿、蛋白尿)。血圧が上がったりして、入院が必要になります。安静、食事制限で治癒しますが、稀に慢性化することもあります。急性腎炎を見逃さないように、初診時と2~4週後の2回尿の検査をします。


③.リウマチ熱:昔は溶連菌が原因のリウマチ熱がよくみられましたが、最近は殆ど見られません。特に心臓に溶連菌が感染しますと重症になり、治癒しても心臓弁膜症を予防するために、長期に薬を内服することになります。


④.アレルギー性紫斑病:出血斑(主に下肢に出現します。)、腹痛、関節痛が、見られます。急性腎炎のような紫斑病性腎炎を併発すると長引く事があります。


出典: 溶連菌感染症




「溶連菌感染症の続発症(合併症)について」

10日間お薬を飲み続けるのは、こどもにはとってもむずかしいことです。しかし、決められた期間はしっかり抗生物質を飲んでおかないと、ときに、心臓弁膜に障害などを起こすリウマチ熱や、急性糸球体腎炎といった続発症(合併症)につながることもあります。


「症状が改善しなくて困った時」

お薬(抗生物質)を飲み始めて2〜3日たっても熱が下がらず、“のど”の痛みも消えないようでしたら、再受診してください。お薬が効いていないこともありますし、水分が不足がちになっている可能性もありますから、放っておくわけにはいきません。

 

出典: シオノギ製薬

 

 


「直接的な合併症」中耳炎・気管支炎・リンパ節炎・副鼻腔炎など

 

「急性腎炎 」

溶連菌感染後、3~4週後に発生することが多く、突然、むくみ、尿が少なくなり、血尿や蛋白尿が出たり、血圧が上がるなどの症状があります。安静、食事や運動の制限や入院が必要になることがあります。

 

「リウマチ熱」

溶連菌感染後に、発熱や身体の各部に炎症が認められます。(多関節炎、不随意運動、皮下結節、心炎) 



 

出典: にのみや小児科・ひふ科

 

 


「溶連菌感染症の合併症」

溶連菌感染症の症状がなくなったとしても、溶連菌を退治しておかないと重大な合併症を起こすことがあります。溶連菌感染症の合併症としては、肺炎、髄膜炎、敗血症、リウマチ熱、急性糸球体腎炎などがあります。


合併症には非常に重いものもあります。合併症を防ぐためには、抗生物質を医師から指示された期間を飲み続けることが大切です。症状が改善してから2〜3週間たってから、尿の検査を行い、合併症などについて確認します。


主な合併症について、以下に説明しておきます。

★急性糸球体腎炎

急性糸球体腎炎は溶連菌感染症が治ってから数週間後に起きることがあります。発症がみられるのは、子どもから若い世代で、主な症状は、疲れやすさ、浮腫、尿量の減少、血圧の上昇などがあります。


尿検査を行うと血尿や蛋白尿がでてきます。入院治療を受けて安静にし、腎臓が回復するのを待ちます。通常、後遺症などは残りません。


★リウマチ熱

全身の関節が炎症を起こして痛みを伴います。さらに心臓の病気、心内膜炎を発症することがあり、心内膜炎により心臓の弁の動きが悪くなると、後遺症が残ることがあり、心臓外科手術が必要になることがあります。


出典: 子どもの健康と病気の情報サイト




「リウマチ熱で39℃の高熱」

溶連菌に感染すると、高熱が特徴のリウマチ熱を発症することがあります。リウマチ熱とは溶連菌を意味するA群β溶連性連鎖球菌に感染し、1~3週間後に発症する全身性の非化膿性疾患のことです。


心筋や心内外膜、弁膜が好発部位と言われており、炎症を起こすのが特徴的です。


発熱や前胸痛、食欲不振、腹痛、倦怠感、頭痛などの症状を伴うことも多い病気で、最初に熱が出て症状が消えたあと、10日後ぐらいに今度は39℃以上の高熱が出る場合もあります。


その際に肩や肘、足首などの関節が大きく腫れてしまいます。加えて、心臓を痛めてしまうこともあり、心臓弁膜症を引き起こす危険があります。


リウマチ熱を発症したら栄養補給を行い安静にして、副腎皮質ステロイド剤かサリチル酸剤を投与します。リウマチとリウマチ熱は同じ病気だと思っている人もいますが、リウマチは慢性関節リウマチのことでリウマチ熱とは違うものになります。


しかし、発症初期の症状はどちらも関節炎が起こるので、最初はどちらか判断しにくい場合もあります。その後の経過や治療方法は全く違ってきます。


また、リウマチ熱の発症年齢は8~12歳が全体の2/3を占めており、子供が多くかかる病気と言えますが、3歳以下なら溶連性連鎖球菌に感染してもリウマチ熱になることはほとんどありませんし、成人の発症例もありません。


昔はよく見られる病気でしたが、最近では衛生状態の改善と抗生物質の開発により発症例は急激に減少しています。


子供の場合は溶連菌に感染し、1~3週間後に腹痛を訴えたら注意が必要です。運動不足や宿便も感染の一要因となる場合があります。


普段から適度に運動をして、水分を多く摂り、食物繊維の多い食生活を心がけて、排泄を促すようにして、リウマチ熱を予防しましょう。


 


「溶連菌毒素でショック症状」

溶連菌であるA群β溶血性連鎖球菌が作り出す毒素によって、極端に血圧が低下するような危機的症状を引き起こす病気を「毒素性ショック症候群」と言います。

 

以前は溶連菌が主な原因ではなく、毒素性ショック症候群は女性の膣にできた傷が原因で発症しやすい病気でした。

 

例えば、女性が生理時に使用する吸収力が高いタンポンがありましたが、毒素性ショック症候の原因となる確率が高かったため、現在は高分子吸収体のタンポンは販売されていません。

 

1978年に溶連菌感染症の1つとして報告されたものの、1980年にはアメリカで特定メーカーのタンポンを使用した人が発症し流行しました。

 

アメリカではきちんとした殺菌消毒が行われていなかったことが大きな要因のようですが、当時のタンポンは吸収性が高く、長時間使用することができたために、被害は増加の一途を辿りました。

 

高分子吸収体ではないタンポンがでも毒素性ショック症候群の原因になる判断できれば、使用を中止したり、量の少ない時には使わない方が良いと判断できます。

 

一方で男性や乳児でも発症することもあり、溶連菌以外では何が原因となるのかはっきりわかっていないのが実状です。

 

また、毒素性ショック症候群は1度かかってしまうと再びかかりやすくなる病気なので注意が必要です。

 

突然に39℃前後の高い熱が出て、激しい頭痛や喉の痛み、疲労感、嘔吐、激しい下痢、全身の発疹などの症状が次々と現れます。

 

発症してから2日間以内に意識がなくなってしまったり、血圧が低下して、最悪ショック状態になる場合もあります。毒素性ショック症候群が重症の場合は10%前後の確率で死に至ってしまう病気です。

 

毒素性ショック症候群は腎臓、肝臓、筋肉、心臓、肺などに障害を侵し、貧血も起こりやすくなりますが、大半の臓器は時間が経つと元通りに回復します。

 

毒素性ショック症候群かどうかは血液検査などを行って調べますが、疑いがある場合には入院となり、抗生物質を使って治療を始めます。

 

現在では症例が少ない毒素性ショック症候群ですが、溶連菌が原因の場合もありますので、溶連菌感染症は二次症が起こる前にしっかりと治療していきたいです。




「細胞が壊死する筋膜炎」

筋膜炎とは筋肉を覆っている筋膜という部分に細菌が入り、細胞を壊死させてしまう病気です。正確には「壊死性筋膜炎」と呼び、極めて重症の細菌感染の1つになります。


下肢や外陰部に生じやすく、激痛を伴う皮膚の炎症で起こる赤みの紅斑と腫れが急速に拡大し、2~3日で感染した部分が壊死してしまいます。


虫刺されや切り傷、注射などが原因となり発症する場合もありますが、敗血症を発症した後に進行してしまうケースもあります。発熱や全身の倦怠感など、強い全身症状を伴う場合が多いです。


壊死性筋膜炎は「フルニエ壊疸」とも呼ばれる病気で、子供や40歳以降の糖尿病患者も多く発症しています。原因となる菌はいくつかありますが、A郡β溶血性連鎖球菌である溶連菌が大きな要因となる場合が多いです。


また、壊死性筋膜炎の検査は皮膚生検という細菌培養検査や皮膚の病変を一部切りとって行うものです。


壊死性筋膜炎は早期に治療を受けることが重要で、抗生剤の点滴と壊死組織を除去するための外科的処置を行います。溶連菌は喉や皮膚に多く寄生する細菌ですので、子供が多くかかる咽頭炎やとびひを同時に引き起こすこともあります。


さらに喉や皮膚以外に感染すると、人食いバクテリアと呼ばれたこともある細菌へと変わっていくこともあります。


感染頻度は非常に少ないのですが、重症化しやすく命に関わります。壊死性筋膜炎はまさにこの人食いバクテリアに侵された状態です。壊死性筋膜炎は治療が遅れてしまうと、ショック症状を起こしたり多臓器不全などに陥りと、死亡率が高くなる病気です。



水ぶくれのような皮膚病

水ぶくれに近い状態になる皮膚病には「掌蹠膿疱症」があります。女優の奈美悦子さんが感染したことでも一時的に有名になりました。


掌蹠膿疱症は40~60代の女性に多い手足の水ぶくれやかさぶたが生じる皮膚の病気です。時折、爪が変形することもあり、爪の水虫である爪白癬と間違われる場合もあります。


溶連菌を始めとした病巣感染が原因となる以外にも、金属アレルギーからも発症するケースも確認されています。


食べ物に含まれる金属成分や歯科金属などは口腔粘膜や腸から吸収され、汗として濃縮されて全身から出ることになります。その汗と接触した皮膚が水ぶくれなどの症状を起こさせることになります。


さらに喫煙や高温多湿の気候も掌蹠膿疱症の原因になります。掌蹠膿疱症の治療ではステロイド、ビタミン配合の塗り薬、テトラサイクリン系の飲み薬で治療します。


また、掌蹠膿疱症と似ている症状で「汗庖状湿疹」という皮膚病があります。手の平、足の裏、手足の指などから汗が出やすく、皮膚の抵抗力が弱い方がなりやすい病気で、細かい水ぶくれのようなブツブツができます。


最初は単なる水虫と判断して、市販の水虫薬を塗る人もいます。もちろん、汗庖状湿疹の原因は水虫菌ではないので水虫薬は効きません。水虫と判断して皮膚科を訪れる人の約20~30%が水虫以外の病気と判断される統計もありますので、皮膚科で検査を受けるのが完治への近道です。


汗庖状湿疹は「手足のあせも」とも言われる皮膚の病気であり、「発汗異常性湿疹」と呼ばれることもあります。


一般的にかゆみはないのですが、あせもと重なって強いかゆみを伴う場合もあります。そのため、かゆみのないときにはサリチル酸ワセリン、かゆみがある場合にはステロイドなどを使って治療します。



「血尿が出る急性腎炎」

急性腎炎は「血尿、ろ過機能の低下、浮腫」などの腎臓障害の総称です。子供が感染することの多い溶連菌が原因の急性腎炎は、上気道炎や扁桃炎などを伴いながら、ろ過機能のある糸球体が炎症を起こして、血尿となって排泄腎炎であることが多いです。


腎炎は約2週間後にまぶたの腫れ、むくみ、高血圧、尿量減少の症状も現れます。発症時の症状は激しく、軽度の状態になるまでは早いものの、完治までは1~3年かかるのが一般的です。


ただ、成人は約30%が慢性化し、子供は完治することがほとんどですが、適切な治療をしないと子供でも慢性腎炎になってしまうので注意が必要です。


また、急性腎炎は薬物療法と食物療法が中心となりますが、発症直後と治療後の経過観察では処置が異なってきます。


溶連菌感染症に対しては抗生物質の投与をすぐに行い、血圧のコントロールに降圧剤、尿量の低下には降圧利尿剤、カルシウム拮抗剤、アンジオテンシン系、βブロッカーも使用します。


腎臓から出血が見られるなら止血剤、高血圧脳症を起こした場合は鎮静剤を使用し、同時に食塩、タンパク質、水分の食事制限も行います。


また、症状が悪化しないように退院後しばらくは登校は禁止となります。尿タンパクが痕跡程度になったら、通常の生活に戻ることができます。


急性腎炎は溶連菌から感染することが多い病気ですが、最近は溶連菌感染症の患者が減少傾向のため、lgA腎症や慢性増殖性糸球体腎炎で急性腎炎の症状を表す比率が多くなっています。


溶連菌の根絶をしない分、比較的に薬のみで症状は軽くなりますが、菌が原因でないことから慢性化することも多いです。そのため、溶連菌が原因なのかそうでないのかは重要で、きちんと溶連菌の検査してもらうことが大切になってきます。


診断は腎生検を行いますが、溶連菌かlgA腎症か原因を確定するために、腎疾患の既往症の有無や症状があらわれるまでの期間、免疫異常などを調べることもあります。



「喉の扁桃腺が真っ赤」

扁桃腺が赤く腫れる病名は咽頭炎と扁桃炎の2種類がありますが、咽頭は喉の浅い部分、扁桃は喉の深い部分のことを意味します。


両方とも風邪症候群の一種であり、溶連菌などの細菌でも発症する一般的な病気です。「のどかぜ」も咽頭炎と扁桃炎の軽い症状になります。


溶連菌感染症では喉の浅い部分が急に炎症する急性咽頭炎が始まりです。急性咽頭炎は菌により喉がひどく炎症を起こすのが特徴のため、乾燥する冬場には咳が出やすく、患者も増える傾向があります。


喉を痛めないためにも加湿器やマスクで喉をケアする対処が必要です。日頃からうがいをきちんと行い、のどを清潔に保ち乾燥を防ぐ事が大切です。喉が炎症すると同時に鼻水などの風邪症候群の他、37~39℃の発熱、器官が炎症して息がしづらく、激しい咳が出る症状を伴います。


急性咽頭炎の診察はできるだけ口腔内も診てもらい、他の口腔内疾患がないかを調べます。舌も診察し、尿検査なども行うことがあります。喉の咽頭部分の粘膜から病原体を摂取する咽頭培養で検査をすると、他の病原菌の有無も判別できます。


ウイルス感染だけではなく、汚れた空気や有毒ガス、薬剤を吸い込んだときにも喉は痛めます。例えば、バスの排気ガスを間近で思い切り吸い込んでしまって、急性咽頭炎になった事例もがあります。


炎症がひどくなると、首や顎の下にあるリンパ節が腫れ、灰白色や黄色の膿が付くこともあります。頭痛や目まいがすることもあり、体は嫌悪感と寒気がしてます。


また、細菌に感染すると筋肉や関節が痛むことも特徴です。その症状に合わせて、薬物療法では解熱剤、鎮静剤、抗生剤が使用します。


完治するためには安静を基本に保湿を十分に行ないます。喉が痛くて食欲がない場合はなるべく熱いものは避けて、ゼリーなどの少し冷たいものを与えながら、温めのスープで水分を補給するようにしましょう。



「食欲不振と嘔吐が続く」

食欲不振、嘔吐、脱水などの症状があり、口の中が出血していたり、口からアンモニアの匂いがする場合は「急性糸球体腎炎」の可能性があります。


急性糸球体腎炎とは溶連菌の感染によって起こる腎臓の病気のことです。溶連菌が抗原となり、糸球体に付着することで炎症を引き起こします。溶連菌による咽頭炎や扁桃炎などの病気にかかった後に、1~2週間ほど経ってから血尿、高血圧、むくみなどの症状が現れます。


毒性を持つ金属塩などによって腎臓が中毒を起こす場合もあり、こうした時にも糸球体の基底膜に異常が生じてしまいます。


急性糸球体腎炎の特別な治療法はなく、入院中に塩分、タンパク質、水分の摂取を制限する食事療法が行われます。特効薬ではないですが、感染防止のためにペニシリンなどの薬物療法は行います。


腎臓にある糸球体の膜が変化することがあり、その場合は腎臓から余分な窒素化合物を上手く排泄できずに、血液中の窒素化合物の濃度が高くなるため、「高窒素血症」という悪化した状態になります。


急性糸球体腎炎から高窒素血症を併発し、1年以上も高血圧や尿の異常などが見られる場合には慢性化していると判断できます。


さらに進行すると1~2%の割合で腎不全や尿毒症になり、危険な状態に陥ります。急性糸球体腎炎のみの場合の入院期間は成人は2カ月前後必要となりますが、成人は約50%で慢性化することが多いです。


一方、子供は大人より入院期間も短く、6カ月~1年ほどで90%が完治します。退院後、体調が良好に思えても、定期的に尿検査を受けることになります。


溶連菌感染症からの急性糸球体腎炎を防ぐためには、原因となる溶連菌に抗生剤を使い、しっかりと溶連菌感染症の段階で完治させるのが大切です。



「腹痛と一緒に手足が内出血」

大人も子供も溶連菌には感染しますが、子供の方が皮膚に病気の症状が現れやすく、内臓も未発達のためにお腹も壊しやすいです。


腹痛に内出血が併発する血管性紫斑病も子供に多く診られる病気の1つで、溶連菌を始めとした細菌の感染、薬剤投与、食べ物の摂取などで免疫反応が異常を起こして発症します。


血管性紫斑病は血管の壁が弱まり、機械的な刺激を受けると小血管が破綻してしまい、皮下に出血が起きて紫斑ができるのが特徴です。機械的刺激を受けやすい手足の末端と関節付近に特に多くの紫斑が浮き出てきます。


紫斑ははしかなどの発疹とは違って、皮下出血によるものなので、透明な板などを使って紫斑部分を圧迫しても赤い色は消えません。腸の厚い層でむくみを起こすこともあるため、突然にものすごい腹痛に襲われることがあり、虫垂炎を疑われることもあります。


症状が紫斑だけなら特別な治療は行わずに経過観察となりますが、紫斑の悪化を防ぐために安静状態は保ちます。


血管性紫斑病は約50%の確率で腎炎を併発したり、ネフローゼ症候群を発症させてしまうこともあるので、定期的に通院することが大切です。腹痛や関節痛がひどいときには、副腎皮質ステロイドを使用したり点滴管理を中心とした治療を行います。


血管性紫斑病は別名「アレルギー性紫斑病」や「ヘノッホ・シェーンライン紫斑病」とも呼ばれています。子供のうちは症状が紫斑だけのことが多く、専門医にはアレルギー性紫斑病と診断されるかもしれません。


血管性紫斑病は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、約2~3カ月で治るのがほとんどです。


また、自宅では安静を心がけて、足などに負担をかけて再発させないように、走ったりなどの運動は避けるようにしましょう。



「猩紅熱で全身に赤い発疹」

子供はよく風邪をひいたり、インフルエンザなどのウイルス感染や細菌感染を起こします。細菌の影響で喉の風邪である咽頭炎や扁桃炎などになったりしますが、その中でも溶連菌が原因となる「猩紅熱」という病気があります。


猩紅熱は溶連菌の産生する毒素で、全身の皮膚に赤い発疹が現れるのが特徴です。そのため、以前はそのまま「溶連菌感染症」とも呼ばれていて、1度かかると「一生で2回はかかることがない」と言われた病気でした。


子供に多く見られる発疹性の伝染病で、くしゃみや咳などによって感染する飛沫感染がほとんどです。昔は死亡率が高かった病気でした。明治時代には法定伝染病の1つに指定され、とても恐れられていた病気です。


法定伝染病として届け出が必要になってしまう猩紅熱とは診断せずに、溶連菌の感染症として診断や治療を行うこともよくあったのですが、1998年には法が改正され、猩紅熱は法定伝染病ではなくなりました。


現在では抗生物質が開発され、治療が可能になり症状も軽い場合がほとんどです。猩紅熱は2~10歳の子供が多く発病する病気で、中耳炎やリウマチ熱などの病気と併発して発症する場合がありますが、発症期間は比較的短く、5日ほどで回復に向かいます。


発熱、頭痛、悪寒、喉の痛みが伴いますが、特徴的なものとして舌が赤くなり、ブツブツがはっきりした「いちご舌」になることです。治療法はペニシリン系かセフエム系の抗菌剤を服用すれば、1~2日で熱が引いていきます。


溶連菌は秋から冬にかけてが最も感染率が高くなるといわれていますが、家族の中で発症者が出た場合には、感染が広がるのを防ぐために治療薬を4日間ほど服用します。


また、猩紅熱を始めとした溶連菌感染症にかかっても、薬を飲めばすぐに症状は治りますが、溶連菌感染症はリウマチ熱や急性腎炎などの合併症を起こす場合もありますので、感染後は10日間ほど薬の内服を続けるのが望ましいです。


出典: 溶連菌辞典